弟の話
今年の二月、弟が実家に帰る。
長年付き合っている彼女といよいよ結婚する為らしい。
今の住んでいるマンションの二年目の契約更新の後や、就職の際には聞いていたことだ。
僕は今住んでる地域に残る。
奴と同居し始めて6年、ついに別れが来る。
「兄弟で同居出来るなんて仲良いね」なんてよく言われる。
「そうですね、いい方だと思います。」
と笑って応えれる。
そりゃそうだ、お互い思春期になっても
うちの家は子供部屋が一つしかなくて喧嘩しても横並びの布団で寝なくちゃいけなかった。
そうじゃなきゃ、襖を隔てただけの仏間で寝るしかなかった。
なので、なんとなく怒りを忘れて遊んで笑った後に謝ったり、なんとなく仲直りしなきゃいけない気持ちに駆られて謝ったり。
日を越すような喧嘩なんてしたことが兄弟になって20うん年あるけど一度もない。
仲良いというか、悪くなる理由がさほどないといった感じだ。
そんな兄弟だし、親が忙しくて2人で留守番することも多かった。
6年に渡る二人暮らしは留守番の延長みたいな感じでとても楽しかった。
寂しいかどうかで言われたら素直に言える。
奴が近くに居なくなるのは寂しい。
考え方も趣味もまるで対極的で。
奴が太陽なら、僕は深海って感じで。
それでも、どっか似通ってて、悪ノリの夜更かしや、早起きして出かけたり、兄弟というか親友って感じだった。
実家住みの高校生と一人暮らしの大学生で会わなかった期間があったがその分の時間を取り戻すかのように六年間たくさん話した。
バカな話も、家族に対する考え方も、たくさん、たくさん話した。
話した上で、合わない部分は合わないし、そのズレも別々の家に住むと大きくなることは確実だ。
でも、何があっても大きな喧嘩はなく、困ったら話し合えると思う。
奴は太陽だし、きっと奴の人生はその太陽らしい人生を歩んで行くと思う。
完敗宣言ってわけでもない。
僕だって楽しく充実した日々を歩んでいきたいと思う。
そして何より、兄弟に勝ち負けも優劣もない。
何か兄弟を比較したがる人が多いけど僕はそう思う。
冷たい言い方をするなら、同じ家に生まれて20うん年一緒に暮らしただけの関係だ。
熱い言い方をするなら、兄弟は1人ではなれない。
1人じゃ夜中のマックも味気ない。
1人じゃ喧嘩も出来ない。
1人じゃ兄にも、弟にもなれない。
兄だからこそ、得したことがあって、
兄だからこその、苦しみもあって、
それを丸々ひっくるめて僕だ。
奴なしだと僕の人生は途端に多くの彩りを失うだろう。
それほどまでに鮮烈だけど、誰よりも心優しい弟だ。
そんな奴が弟で僕は幸せだと思う。
兄弟だったからこそ良かったところはあっても
1人でよかったことなんて僕にはそんなにない。
同居や近所に住むことなんてこの先の人生で限りなくないだろう。
だからこそ、残り3ヶ月、少しでも恩返しじゃないが楽しい思い出を奴に残せたらと思う。
頼りなくて、情けなくて、鈍臭い僕だけど
奴の楽しい兄弟で、暮らしてて楽しい兄弟だったなと思ってもらえたら嬉しい。
そう強く思う。
近頃、引越しに向けて色々荷造りをしてたので少しセンチになって書きました 笑
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ではまた。