健康優良不良青年

日々のこと、音楽や映画、漫画なんかの好きなものの話

夢で死す

 

江戸川乱歩作品で「パノラマ島奇譚」という作品が好きだ。

ネタバレ込みのあらすじになるが

『夢想家の貧乏人が自分そっくりな金持ちになり代わって、自分の理想である「パノラマ島」を作り、唯一なり代わりに気付きそうな金持ちの嫁を、実現したパノラマ島の中で観光中の事故として殺そうとするが失敗し、自分が死んでしまう』

という話である。

 

これだけ読むと面白さが分からないと思う。

僕はこういう物語の要点をまとめるのが苦手なので各自読んで欲しい。オチ言っちゃったけど。

エンタメ方向でまとめようとするとまとめるどころか長くなるし、今回のように要点だけをまとめるとエンタメ要素が抜け落ちてダシ抜きの高野豆腐のようになる。難儀なものだ。

 

脱線しそうなので話を戻す。

このパノラマ島奇譚のどこが好きかと言うと

「破滅的エンドのように思えるが、夢の中で死ねるってのはハッピーエンドじゃないか?」

という点だ。

江戸川乱歩の妖しい魅力を持った文章で綴られる完成したパノラマ島を巡る時の描写は恐ろしくも美しく桃源郷のような地獄を思わせられる。

(こないだ見たミッドサマーのホルガ村もその匂いがしてとても好きだった。)

そんな桃源郷の中で殺人を企てた報いなのだろうか、夢想家は己の企てた方法で死んでしまう。

その死に方もまた滑稽だし、刹那的美しさがあるんだが読んで欲しいのでこれもボカす。

そんなに長い小説じゃないし、青空文庫にあるので是非に読んで欲しい。

オチまでネタバレしたけど読んで欲しい。

描写が、描写が大事だからね、しかも文章もたまんないから、ね、先っちょだけ、先っちょだけでも読んで欲しい。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56651_58766.html

 

とまぁ、結局何が言いたいのかというと

近年、僕は

世代や地域を超えて様々な人と交流したり、

酒を酌み交わしたり、好きなものを語り合ったりと、「自分が夢の中にいるようだな」と思うと共に、

「そんな時間を捻出することがこれから難しくなるんではないか?」という青年期の終わりみたいなものを近頃強く意識し始めたのである。

 

僕にとって僕の青年期を

大学1年生から今年か来年くらいまでだとすると「人生の中でも一番遊び惚けた時間」だったんじゃないかと思う。

そして、小学生〜高校生までの

・一人暮らしをする。

・テレビのある自分だけの部屋を持つ。

the pillows等のコピーバンドをする。

という夢を全て叶えてしまった。

でも、それらのほとんどは家族の力を借りてのものである。自分の力で叶えたものではない。

そして、この青年期は遊びに遊んだ。

これからの人生の環境変化や加齢において

これほどまでに遊べるかというと中々難しくなってくるかと思う。

そうすると、どうしても「夢の終わり」を意識してしまうのである。

 

これからの人生を悲観的に捉えている訳じゃなく、これからも続く限りなんとかボチボチやっていこうと思うし、その時々で必ず楽しむことを自分からやると思う。

だが、どんな祭りのような楽しい時間もいつかは終わりは来る。

そして、僕はその終わりをついつい見てしまう、考えてしまう性分だ。

ならば、その終わりの花火を最後まで見ることなく一発目の花火が上がると共に心臓が止まってしまうのも一つの幸福ではないかと強く思うのだ。

祭りの後片付けは物悲しく、寂しいものだ。

小説でのパノラマ島も夢想家の死後、無理やり財産をぶち込んで作ったものだった為、一気に桃源郷のような景色は失われ、荒れ、朽ち果てて不気味な廃虚のある島扱いにされてしまう。

 

繰り返すが、パノラマ島奇譚の夢想家の主人公は恐らく自分を不幸だと思っているだろうが、僕は幸福だと思う。

彼は自分の夢を叶えることが出来た。

パノラマ島の終わりを彼は見なくてよかった。

パノラマ島を自分で終わらせなくてよかったからだ。

 

洒落ぶった言い方をすると居心地の良い今の僕の夢のような時間を僕は自分で終わらせることになる。

夢の時間は一度終わる。

とても寂しいし、「どうにか延長出来んか?」と何処の誰に相談したらいいのか分からんが言ってみたくもなる。

自分で決めたことで、後悔はないし、これからもしないだろう。

そして、自分の新たな夢の場所を築けるようにもがく日々が来る。

弱音も吐くだろうし、腹も立つこともあるだろうけど新たな夢の為に何とかやってのけようと思う。

そんな時間も「夢の半ば」じゃないかと思うとする。

どんな時間も夢を叶える為に必要な時間だと思えれば、その中で何かがあって死ぬようなことがあったとしても、それは「夢の半ば」だ。

叶わなくていいなんてさらさら思ってなくて

どんな時も夢を叶える為の間の時間だと思えればお得なんじゃない?くらいのものだ。

夢は必ず叶える。

叶っても叶うまでも夢の中だ。

だから、僕は夢で死す。

 

まぁ、ここまで夢ってワードを連発しまくってマルチセミナーや新興宗教に入った奴の文章みたいになってて申し訳ない。

その手の奴らは夢を抽象的にやたらと使うが、

僕はちゃんと具体的な物を示しておこうと思う。

僕のこれからの夢は

「自分の飲食店を持つこと。」

そして、現在その方向に転職しようと最近もがいてるといったところだ。

休みは確実に少なくなるし、決まった職場によっては慣れ親しんだ今の街を出ることになる。

だから、

「夢の(ような今の遊び呆けてる時間は)終わり」だ。

でも、夢が叶って店が出来た時、そこで出会える人やこれまでの交流があった人と立場は変われどまた新たな楽しい時間を過ごせるんじゃないかと思うのだ。

だから、一度は終わり、さよならだ。

名残惜しいし、めちゃくちゃ寂しいし、嫌だ嫌だと駄々をこねたくなるけど。

 

青年期の夢の時間は自分の力というより、家族の力で得た部分が多かった。

そういえば、物語のパノラマ島も夢想家の力で叶えたというより、成り代わった金持ちの財力で叶ったものだった。

誰かの力で叶った夢は、自分の力で叶えた夢より脆く儚いのかもしれない。

大好きなthe pillowsの大好きなFUNNY BUNYYでも

「君の夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ」

さわおさんは歌ってくれている。

近頃の僕には「頑張れ」と同時に

「自分の力で夢を叶えるってことはそう簡単じゃないぜ」

と歌ってもらっているようにも感じる。

それを受けて「『風の強い日』上等!」

なんて雄々しく言いはしないが、向かい風を喰らっても歩み続けようと思う。

いつか、今の僕の夢が自分の力で叶えられるように。

 

少しセンチになったり、急に目標を語り出したり情緒不安定な長ったらしい文章で申し訳ないです。

ここまで読んでくださった方がいらっしゃればありがたいです。

ありがとうございました。

そして、パノラマ島奇譚を読んでくれ。

URLもっかい貼っとくから。いいね?

 

https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56651_58766.html

 

今度こそ、ありがとうございました。

ではまた。